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シュタイナー教育の視点から
7.162024
「触覚の大切さ」シュタイナー教育の視点から No20
触覚の大切さ
触覚は、自分の外にあるものに直接触る感覚です。外界のものに触るのは指、手、腕、足だけではなく、全身の皮膚ですから、皮膚が直接、自分の外にあるものに触れるのが触覚です。触覚は何かに直接触ることによって育まれていく感覚なので、生活の中でどのような触覚体験があるか、何に触れるのかが触覚育成のためにはとても大切です。
シュタイナー園にあるような木の枝を切って角を落としてオイルで仕上げたような積み木だと、同じものはひとつもなく、木の種類、形、重さ、表面の状態などで異なる触覚体験があります。子どもにとって積み木は遊ぶための素材で、遊びの中で色々なものに見立てられて使われていきますが、その積み木を手にした時には、その積み木ならではの質を直接感じているのです。感覚を通したいろいろなものの質との直接の出会いは、子どもの精神的質の育ちにつながってきます。IT機器を通した間接的な体験では、ものごとの質と直接出会うことはできません。
触覚は外のものと出会う感覚ですが、外の世界と出会っている自分自身を感じる感覚でもあります。子どもがいつも同じタオルやお人形を手放さず持っているときや、大人が愛着のある道具を手にして仕事をするときなどは、触覚を通していつもと同じ感触を体験すると同時に、自分自身も体験し確かめているのです。同じ物の感触を感じている同じ自分も感じることにより、安心安定がもたらされます。
そして直接の肌と肌の触れ合いは、触覚を育てるのにとても大切です。触ることにより触った相手だけでなく自分も感じ、触られることにより触ってくれる相手を感じるだけでなく自分自身も感じています。スキンシップにより安心感が生まれるのはこの両方を感じ合うからではないかと思います。
人と人との肌を通しての触れ合いは、素晴らしいものですが、とても繊細な面もあります。相手に、不快感、恐怖感、不安感などを感じさせてしまうこともあるのです。一方的に触れるのでなく、相手がどう感じているかを常に意識して相手が心地よさや温かさを感じるようなやり方で、子どもを抱っこしたり、手をつないだり、キスしたり、ハグしたり、わらべ歌などのふれあい遊びをしたりできるとよいと思います。
プロフィール・吉良創 (きらはじめ)
1962年生まれ、自由学園卒。ヴァルドルフ幼稚園教員養成ゼミナール(ドイツ、ヴィッテン)修了。
滝山しおん保育園園長、南沢シュタイナー子ども園理事、日本シュタイナー幼児教育協会理事、ライアー響会代表。国内外でシュタイナー教育、ライアーに関する講座、講演、コンサート、執筆などを行っている。