シュタイナー教育の視点から

「自然の中で育つもの」シュタイナー教育の視点から No. 5

自然の中で育つもの

乳幼児の大きな課題は、自分の体を育むこと。生まれた時に両親からいただいた体を、一生住み続ける自分の家に作り変えていくプロセスです。それぞれの器官がその本来の機能を持つように、本来の形へと形成されていきます。感覚器官の育成は、この体づくりの中でもとても大切です。

スマホ、タブレット、テレビなどのメディア機器のスクリーンやスピーカーを通しての体験が「間接」であるのに対して、感覚体験は「直接」です。直接、触り、見て、耳を澄まし、嗅ぎ、味わうことなどを通して、それぞれの感覚器官は育まれていきます。直接、感覚器 官を通して出会うことによって、出会ったもの の 「質」を体験します。子どもの年齢が低いほど、出会ったものと一心同体となります。感覚を通し、ものごとの「質」と出会うことによってこそ、その子どもの身体的、心的、精神的な、自分の「質」が育っていくのです。

何を見るかによって視覚が、何を聴くかによって聴覚が、何を食べるかによって味覚が育まれます。乳幼児期の感覚体験、そして感覚体験のフィールドである環境は、子どもの成長発達にとても大きな影響を及ぼします。そして私たちの周りの自然界は、豊かな感覚体験ができるフィールドです。泥だらけになって遊び、色々な素材を集めてきて基地を作り、野山を駆け回り、美しく咲いたたくさんの花を見て、様々な花の香りと出会い、ミミズやダンゴムシと戯れ、きれいな蝶を追いかけ、鳥のさえずりに耳を傾け、雲や虹、風やそして 1 日の中の朝、昼、夕方 の違う質や、季節の巡り を 体験 して と、挙げていくときりはありません。子どもは生活や遊びの中で、大人とは全く異なる仕方で、自然界の法則、物理学、生物学、化学、天文学などを自主的に学び、身につけていきます。そこには自然の4つの要素、地水火風との出会いがあります。

子どもの傍にいる私たち大人は、子どもたちに自然についていろいろと説明したり教えたりするのでなく、子どもたちが自主的に活動できる自然を直接体験できる環境を用意することをしていきましょう。私たち自身が 自然と触れ合い、美しい、美味しい、気持ちよいと感じたり 、驚いたりできること も とても 大切です。大人は子どものお手本ですから。コロナの影響はまだ続いていますが、夏の時期、子どもたちはもちろん、私たち大人も、自然の中のすばらしいものごと と 直接出会えるといいですね。


プロフィール・吉良創 (きらはじめ)
1962年生まれ、自由学園卒。ヴァルドルフ幼稚園教員養成ゼミナール(ドイツ、ヴィッテン)修了。
滝山しおん保育園園長、南沢シュタイナー子ども園理事、日本シュタイナー幼児教育協会理事、ライアー響会代表。国内外でシュタイナー教育、ライアーに関する講座、講演、コンサート、執筆などを行っている。

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