シュタイナー教育の視点から

「地球の呼吸人間の呼吸」シュタイナー教育の視点から No14 

地球の呼吸人間の呼吸

日本に暮らしていると、春夏秋冬の季節をはっきりと体験できますが、それはとても素晴らしいことではないかと思います。季節の巡り、四季のリズムを生活の中で、直接、感覚を通して体験することは、現代の都会での生活の中では、だんだん難しくなってきているようです。乳幼児の健やかな成長発達や人間の健康な生活には、実は季節をちゃんと感じて生活することはとても大切です。

夏至と冬至は対極で、昼が一番長いのは夏至で、一番短いのが冬至。一番暗い冬至から光が増え始め、光と闇が同じになるのが春分で、夏至から光が減り始め光と闇が同じになるのが秋分。そこから闇が増えていって冬至へと向かいます。春分と秋分は昼と夜の長さが同じでも進む方向は真逆です。この季節の巡りは、地球の呼吸です。冬至が一番息を吸い込んだ状態でそこから少しずつ息を吐いていき、息を吐ききった時が夏至。地上は緑や綺麗な花々に溢れ、地球の中にあったものが外に吐き出されたかのようです。そしてそこから息を吸い始め、秋を過ぎると地上は色が減っていき木の葉も散り、色のない世界へと移っていきます。

人間の心や精神も地球と似ており、夏には外での感覚体験へ向かいますが、秋から冬へと内面へ向かいます。外の世界で自然界の光や色や音などを直接感じることから、読書や芸術、室内での手仕事など、より内的な方向へ向かいます。

乳幼児期は、身体が育っていく時期。身体の成長発達に影響を与えることの一つが生活のリズムですが、自然界のリズム、季節のリズム、地球の呼吸を直接体験していくことは、子どもの身体の成長発達に大きな力となります。

秋が始まり、冬へと向かっていく時、この季節ならではの体験が、生活の中でできるとよいと思います。秋の実りを美味しくいただいたり、紅葉の美しさを感じたり、何らかの芸術活動を始めたり、ゆっくり手仕事やお人形づくりをしたり。それらは子どもの成長発達を促すだけでなく、大人の身体的、心的、精神的な健康にも大きく影響していきます。


プロフィール・吉良創 (きらはじめ)
1962年生まれ、自由学園卒。ヴァルドルフ幼稚園教員養成ゼミナール(ドイツ、ヴィッテン)修了。
滝山しおん保育園園長、南沢シュタイナー子ども園理事、日本シュタイナー幼児教育協会理事、ライアー響会代表。国内外でシュタイナー教育、ライアーに関する講座、講演、コンサート、執筆などを行っている。

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