シュタイナー教育の視点から

「人間らしい当たり前の生活の大切さ」シュタイナー教育の視点から No13 

人間らしい当たり前の生活の大切さ

今や「行動や身体のインターネット(IoB)」の時代。人の行動がAIにより分析予測され、自分がしたいこと、買いたいものなどの情報が送られてくる、自分で考えなくても自分の行動を決めてもらえる時代です。将来は、AIによる自分に関する情報や予測が、直接自分の心や身体に届き、自分の思考、感情、行動も気がつかないうちにコントロールされている時代になるのかもしれません。

Society5.0やムーンショットといった未来社会の計画が内閣府のホームページに掲載され、VR空間(仮想空間)でアバターを介して何でもできる未来の素晴らしい世界が予定されています。4Gは5Gに、そして更に先へと移動通信システムも進み、人体への電磁波の影響も深まっています。

このメタバースの世界で、本当に人間らしく生きていく人に育っていくために必要なのは、乳幼児期からIT機器の中で暮らし、ゲーム漬けYouTube漬けになるのではなく、人間らしい普通の生活を楽しんでいくこと。社会からIT機器が無くなることはなく、共存していくことは必要ですが、ヴァーチャルな体験ではなく、直接感覚を通したリアルな体験こそが、子どもが人間らしく育っていくために大切です。

当たり前の人間の営み、例えば、家事仕事、お人形づくりや手仕事、さまざまな芸術体験、自然との触れ合いなどを、生活の中で当たり前に体験して真似していけること。メディアを介さないで直接、人間や自然を感じ体験すること。これらはそれぞれの生命の「質」を感じるということで、「質」との出会いにより、子ども自身の目に見えない「質」、「生命」が育っていきます。

ヴァーチャルな世界には「生命」は無く、アバターやロボットは、生まれ、成長し、老い、死ぬことはできません。子どもが健やかに育っていくために、私たち大人自身も、体、心、精神ともに健康で過ごしていくために、何が大切かをしっかり考えて実践していきましょう。


プロフィール・吉良創 (きらはじめ)
1962年生まれ、自由学園卒。ヴァルドルフ幼稚園教員養成ゼミナール(ドイツ、ヴィッテン)修了。
滝山しおん保育園園長、南沢シュタイナー子ども園理事、日本シュタイナー幼児教育協会理事、ライアー響会代表。国内外でシュタイナー教育、ライアーに関する講座、講演、コンサート、執筆などを行っている。

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