シュタイナー教育の視点から

「手仕事のリズムと繰り返し」シュタイナー教育の視点から No16

手仕事のリズムと繰り返し

10年前から園長をしている保育園は、いわゆるお勉強はしない、自然の中でたくさん体を動かし、動物の世話をし、給食は玄米で野菜たっぷり、といったちょっと変わった保育園。シュタイナー園ではありませんが、子どもたちはたくさん手仕事もしています。

自分の体を育んでいく乳幼児期は、まず体が賢くなることが必要で、自分の体を自分でしっかりコントロールできるようになることが大きな課題。たくさん歩いたり、走ったり、縄跳びをしたり、木登りをしたりしながら、自分の体の動きをコントロールし体のバランスを身につけていきます。これらは大きな動きの発達です。

織物、縫い物、指編みなどの手仕事は、指先の器用さ、細かい小さい運動の発達を促します。先日も幼児たちが指編みをしました。指に毛糸をかけて引き出しては指にかけ、引き出しては次の指にかけ、この動きを続けていきます。1段目が終わるとまた毛糸をかけて次の段を編んでいきます。このシンプルな動きができるようになると、あまり考えもせず間違わずに繰り返していくことができます。上手に編んでいる動きはとてもリズミカル。そして編み上がった部分がどんどん長くなっていくことを喜びます。

ひとりのいつも落ち着きのない男の子も指編みを始めました。そしてやり方がわかると、とても集中し、機嫌よく落ち着いて、長い時間、指編みに没頭しました。そして長く編み上がったマフラーを、お母さんにあげると喜んで持って帰っていきました。

このような手仕事は、手先の器用さを育み、小さい動きにおいて体をコントロールすること、体という家に住み込んでいくことを促します。そして手仕事の面白いところは作品が出来上がるということ。そこには喜びもあり、手仕事のリズムは子どもの心を安定させ落ち着かせます。

商品としての出来合いのものを買うのではなく、自分の手で作れるという体験をすることは、現代のメタバース社会の中で人間らしく育ち生きていくためにとても大切です。


プロフィール・吉良創 (きらはじめ)
1962年生まれ、自由学園卒。ヴァルドルフ幼稚園教員養成ゼミナール(ドイツ、ヴィッテン)修了。
滝山しおん保育園園長、南沢シュタイナー子ども園理事、日本シュタイナー幼児教育協会理事、ライアー響会代表。国内外でシュタイナー教育、ライアーに関する講座、講演、コンサート、執筆などを行っている。

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