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シュタイナー教育の視点から
10.152024
「昔話と人形劇」シュタイナー教育の視点から No21 2024年 秋冬号
シュタイナー園ではお話の時間があります。絵本や本の読み聞かせではなく、お話を覚えてそれを語る「素話」と呼ばれる語り方です。私がクラス担任をしていた時は、グリムの昔話、日本の昔話が中心で、3歳児など小さい子どもが多い時期は、繰り返しのリズムのあるお話も選んでいました。例えば「おいしいおかゆ」、「おおかみと7匹の子やぎ」「いばら姫」、「ならなしとり」「笠地蔵」「大きなかぶ」「3びきのやぎのがらがらどん」など。同じお話を2週間くらい毎日繰り返します。
いくつかのお話は、シンプルな人形劇にしました。机の上に舞台を作り、立ち人形を使って教師が語りながら演じるもの、登場人物が多いお話では 演じる人と語る人を分け、語る人はライアーなどで音も加えました。毎年3月にはマリオネットを使った人形劇でした。
人形劇に使う人形は教師の手作りです。フェルトを使った立ち人形、羊毛で作った立ち人形や動物たち、そしてシルクを使ったマリオネット。一度そのお話の人形セットを作ると毎年、同じ時期にそのお話を演じる際に登場します。年季の入った人形もありました!
人形や舞台を作る際に大切なのは、そのお話、登場人物や動物、風景などが何を表しているかを探ること。それは登場人物の服の色や背景の舞台の色、フォルム(人形のプロポーション)につながります。昔話(メルヘン)は現実社会のお話ではありません。昔話には、人間の魂の成長や人間とは何かということなどが「イメージ」として表現されています。登場するものが何のイメージ、象徴、シンボルなのか。それに興味を持ちいろいろと考え、実際に人形を作る素材を選び、製作し、そして演じます。とても楽しい作業です。
素話やシンプルな人形劇をするのは、そのお話や登場人物などの外からの固定した「イメージ」を子どもに押し付けないため。子どもがお話に耳をすましながら自分で「イメージ」を作り出すことができるために、語り方も感情の押し付けは避けます。
グリムの昔話は、大人にとっても魂の栄養。そしてとても面白いので、まずご自身のために読んでみてください。
プロフィール・吉良創 (きらはじめ)
1962年生まれ、自由学園卒。ヴァルドルフ幼稚園教員養成ゼミナール(ドイツ、ヴィッテン)修了。
滝山しおん保育園園長、南沢シュタイナー子ども園理事、日本シュタイナー幼児教育協会理事、ライアー響会代表。国内外でシュタイナー教育、ライアーに関する講座、講演、コンサート、執筆などを行っている。