シュタイナー教育の視点から

「光の色 生活の中の色」シュタイナー教育の視点から No22 2025年 春号

シュタイナー園で子どもたちは、ぬらし絵、にじみ絵などと言われる水彩画を描きます。使う絵の具は透明水彩。水で溶いた赤、青、黄の三原色です。筆に色をつけ、水で濡らした画用紙に描いていきます。教師が「今日は◯◯の絵を描きましょう」と言うことはなく、絵を描くというよりも、色を体験する時間です。シュタイナー学校では先生の指示のもとで描くことが始まります。

絵の具は物ですから、そこには物質としての色素(ピグメント)があり、それが画用紙に置かれていくのですが、濡れている画用紙の上に水で溶かれた絵の具をのせると、色素は紙に定着していないので、色が自然に広がっていき、色が出会うと他の色が産まれます。色が動き変化していく様子に、子どもの目は輝きます。もちろん絵が乾くと、絵の具の色素は画用紙に定着して動きは無くなります。ぬらし絵では、まだ物質に固定されていない色を体験できるのです。

虹の色、空の青、海の青などには、色素はありません。光と闇の間に物質的な色素無しに生まれる、いわば光の色なのです。この光は実際の光であると同時に、目に見えない精神的な質でもあります。ぬらし絵はそれを擬似的に体験できるテクニックの一つです。

私が南沢シュタイナー子ども園で担任をしているときに絵の具の時間の最初に筆を片手に毎回歌っていた「にじのはし」の歌詞は、こんな感じでした。

「七色の虹の橋 光の色の虹の橋 私のところに降りてこい 光の色を連れて来い」*

染物はもちろんですが、手仕事をはじめとする物作りでも、色はとても大切。布、羊毛、毛糸、糸、木、金属、土などの素材や作品の物の表面の色素の色を私たちは感じていきます。子どもたちの成長を促すような色の体験、私たち大人の人間らしい生活に力を与えてくれるような色の体験を、生活の中で当たり前にもてたらと思います。人間を必要以上に覚醒させたり、不安定にさせたりするような強い色の刺激がとても多い現代社会を生きる上で、私たちの周りにある色、色と関わる環境を、意識して見直してみませんか。

*「にじのはし」

「子ども園のうた」吉良 創著 南沢シュタイナー子ども園刊 より

https://lyrekodomoen.thebase.in/items/77703150


プロフィール・吉良創 (きらはじめ)
1962年生まれ、自由学園卒。ヴァルドルフ幼稚園教員養成ゼミナール(ドイツ、ヴィッテン)修了。
滝山しおん保育園園長、南沢シュタイナー子ども園理事、日本シュタイナー幼児教育協会理事、ライアー響会代表。国内外でシュタイナー教育、ライアーに関する講座、講演、コンサート、執筆などを行っている。

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