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シュタイナー教育の視点から
4.302025
「季節と共に生きる」シュタイナー教育の視点から No23

乳幼児のこの時期の一番の課題は、一生の間引っ越すことができない住み続ける「家」としての体を育むことです。この時期に住みやすい家としての健やかな体づくりができると、その家の中で、生命は息づき、魂や精神も健やかに育まれていきます。乳幼児期の生活の中の様々な感覚体験は、どのように自分の体を育んでいくかに、大きく影響を及ぼします。
健やかに体を育んでいくためには、生活にフォルムとリズムがあって、それが繰り返されていくことが大切です。よい生活のリズムが繰り返されていくと、子どもは落ち着き機嫌よく過ごすことができます。そして安心して周りの世界を信頼していきます。そしてそれは自己肯定感を育んでいくのです。
季節のリズムを感じて生活することも、子どもの健やかな成長発達を促します。同じ散歩道やいつも遊ぶ公園にも、季節のめぐりが植物、虫、鳥、動物そして天候などに現れます。日常の生活の中でも、その時々の季節を感覚を通して直接体験すると、そこに驚きや喜びも生じるでしょう。その時期の旬の食べ物をいただくこともとてもよいことです。そしてその季節ならではの行事や祝祭の体験は、子どもにとって非日常の特別なものです。
お祭りには、それぞれのお祭り特有の歌や踊り、飾りの色や形、そして食べ物などがあります。お祭りの準備や、お祭りのご馳走の料理、そしてそのお祭りならではのものを子どもと一緒に手作りしてみましょう。子どもができない難しい手仕事は、大人が喜びを持ってお祭りの準備をしている姿を見せてあげましょう。そして手仕事で作ったそのお祭りの特別なものを飾ったり身につけたりすることは、子どもにとって喜びとなり格別な体験になるでしょう。
現代人の生活には季節感が薄くなり、ある意味では、毎日がお祭りのようになってしまいました。淡々とした中にも喜びのある日常の普通の生活が繰り返されていく中に、季節の節目に非日常の特別なお祭りがあるような生活は、本来の人間らしい生活であり、1年間の季節の巡りのリズムを感じることは、子どもにも大人にも生命力を高める働きがあると思います。ハレとケが感じられる生活を心がけたいものです。
プロフィール・吉良創 (きらはじめ)
1962年生まれ、自由学園卒。ヴァルドルフ幼稚園教員養成ゼミナール(ドイツ、ヴィッテン)修了。
滝山しおん保育園園長、南沢シュタイナー子ども園理事、日本シュタイナー幼児教育協会理事、ライアー響会代表。国内外でシュタイナー教育、ライアーに関する講座、講演、コンサート、執筆などを行っている。