- Home
- シュタイナー教育の視点から
- 「歌うことがもたらすもの」シュタイナー教育の視点から No. 6
シュタイナー教育の視点から
9.172020
「歌うことがもたらすもの」シュタイナー教育の視点から No. 6
歌うことがもたらすもの
皆さんは、歌いますか?いつ歌いますか?どこで歌いますか?何をしながら歌いますか?乳幼児期の子どもの保護者や幼児教育者は、子どもとの生活の中で、童謡、子守唄などを歌うと答える方が多いと思います。では、子どもとの関わりの中ではなく、歌うことはありますか?
このような質問をすると、幾つかの同じような答えが返ってきます。気分がいいとき、嬉しいとき、リラックスしているときに、お風呂に入っているとき、車を運転しているとき、台所で料理をしているとき、などなど。これを読んでくださっている方からは「人形を作りながら!」という答えも出てくると思います。
カラオケのように「さあ、歌うぞ!」と意識して歌うのではなく、私たちは鼻歌のように自然に歌っていることがあります。そのときのことを思い出してみると、リラックスしていて、気分がいいときであることに気づきます。車を運転しながら歌う人は、車の運転が上手で、安全には気を使っていてもリラックスして運転できる人だと思います。その人も免許取立ての頃には、運転中に歌うことはできなかったでしょう。料理をしたり、掃除をしたり、洗濯物を干しながら歌っている人は、その家事の仕事をリラックスして、楽しんでやっているのではないかと思います。イヤイヤ家事の仕事をしているときや、何かにイライラしているときに、歌うことはできません。
私たちが歌っているときは、体も心も精神的にも健康なよい状態のときなのだと思います。体がだるかったり痛みがあるときに歌うことはできませんし、イライラしていたり怒っているときに歌うことはできません。そして歌っているお母さんの前で、子どもが何かをしでかしたとき、お母さんの歌はパタリと止まります。怒ることと歌うことは両立しないのです。
お母さんお父さん、幼児教育者が子どもの前で、自然に歌っている、あるいは実際には歌っていなくても歌えるような状態にあることは、子どもにとって素晴らしいことです。歌える状態であるかどうかは、私たちが体も心も精神的にもよい状態であることを知るための一つのバロメータです。私たちの歌えるようなよい状態が子どもに伝わっていき、子どもも機嫌よく過ごすことができます。
そして子どもが、スピーカーから再生される歌や音楽でなく、人の歌声や、楽器の演奏を直接体験できることはとても大切なことで、楽しんで歌う人が、子どもの傍にいることに大きな意味があるのです。歌が苦手と思っている人も、音程が外れていても、気にせず子供の前で子どもと一緒に歌ってみてください。でも本当は、幼児教育者はちゃんと音程が取れるといいのですが・・・・。
プロフィール・吉良創 (きらはじめ)
1962年生まれ、自由学園卒。ヴァルドルフ幼稚園教員養成ゼミナール(ドイツ、ヴィッテン)修了。
滝山しおん保育園園長、南沢シュタイナー子ども園理事、日本シュタイナー幼児教育協会理事、ライアー響会代表。国内外でシュタイナー教育、ライアーに関する講座、講演、コンサート、執筆などを行っている。