シュタイナー教育の視点から

「生きる意志を育む」シュタイナー教育の視点から No18

生きる意志を育む

妊婦は自らのうちに胎児を育み、そして出産します。妊婦の子どもを産もうとする意志は男性からは計り知れない大きなものだと思います。しかし、お産は妊婦だけの行為ではありません。そこには胎児の生まれようという意志も働いているのだと思います。もちろん胎児は、明るい覚醒した意識は持っていないので無意識に、生まれてこようという意志を持っているのです。

生まれよういう意志は、自ら育っていこうという意志に繋がっていきます。育ててもらいたいというのではなく、自ら育っていこうという意志です。子どもたちの育っていこうという意志は、生まれた時から始まっている、無意識な自己教育なのです。

これは大きく捉えると「生きる意志」と言ってもよいと思います。成人して一人の大人の人間として生きていくために必要な身体・魂(こころ)・精神(自我)が育つと、健康に働くために生命を保っていこうという意志が働いていきます。その中には出産したり親になったり、ということも含まれています。

生きる意志は、次の段階へ向かいます。老いていこうという意志、そして死んでいこうという意志です。老いることや死ぬことは、ネガティブに扱われることが多いですが、生きる意志には、生まれて育っていこうという意志が含まれるのと同様に、老いていき死んでいく意志も含まれているのです。教育はいつも「自己教育」。人間は生まれて死ぬまで、自己教育が続いていきます。

いろいろなことの起こるこの現代社会の中であっても、自己免疫力を高め、身体も魂も精神的にも健康な状態で生活する基盤となる、自分の「生きる意志」。耳を澄まして、人間らしく、自分らしく生きていくことができたらと思います。


プロフィール・吉良創 (きらはじめ)
1962年生まれ、自由学園卒。ヴァルドルフ幼稚園教員養成ゼミナール(ドイツ、ヴィッテン)修了。
滝山しおん保育園園長、南沢シュタイナー子ども園理事、日本シュタイナー幼児教育協会理事、ライアー響会代表。国内外でシュタイナー教育、ライアーに関する講座、講演、コンサート、執筆などを行っている。

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