シュタイナー教育の視点から

「遊びは仕事」シュタイナー教育の視点から No19

遊びは仕事

子どもは遊ぶ存在です。おままごとで料理をしているとき、泥団子を作っているとき、子どもは楽しみながら、遊びに集中、没頭していきます。遊びに手抜きはしません。真剣に遊ぶのです。成長発達に応じて、遊び方や遊びの内容は変化していきますが、乳幼児期ならではのよい遊びは、自発的、自主的、主体的な行為。楽しそうに遊んでいても、大人によって仕向けられた遊びや、ゲームなどのメディア機器による外からの音や映像の刺激に対応していく遊びは、子どもが自発的に繰り広げる遊びとは質が異なります。

乳幼児期の課題は「人間になっていくこと」で、そのために周りの人間を無意識に模倣していきます。幼児が繰り広げる「ごっこ遊び」のモティーフの多くは「仕事をしている人間」。歯医者さんに行った子どもが歯医者に、お寿司屋さんに行った子どもがお寿司屋さんにと、自分が体験したお仕事をしている大人がお手本でそれを真似していきます。人間ならではの営みである「仕事」を真似して遊びの中で再現していくことによって、人間とは何かを身につけ学んでいくのです。

家事仕事のお手伝いも、子どもにとっては楽しい遊びです。そしてその遊びは、真剣な行為。子どもの遊びにおける真剣さは、 大人に成ったときの、仕事への真剣さへつながります。 幼児期の遊びと大人の仕事はつながっているのです。

おもちゃは、遊びのための素材です。 シュタイナー園には、布、紐、つみき、板、羊毛、木の実、貝殻、石ころといったものが置かれ、それらは子どものファンタジーの力により ありとあらゆるものに遊びの中で変容していきます。 ファンタジーの力とは、あるものを他のものに見立てる能力。あるいは概念を物に結びつける能力です。

子どもにとっての、よいおもちゃは、 大人の手仕事におけるよい道具やよい素材と似ています。 使いやすいよい道具があり、よい素材があると 大人の手仕事においてファンタジーの力が動き始めるのです。 そのときの大人の手仕事は創造的な自発的な楽しいものとなり、 自分が幼児だったときに培った遊びにおける真剣さが、大人の仕事に現れ出るのです。


プロフィール・吉良創 (きらはじめ)
1962年生まれ、自由学園卒。ヴァルドルフ幼稚園教員養成ゼミナール(ドイツ、ヴィッテン)修了。
滝山しおん保育園園長、南沢シュタイナー子ども園理事、日本シュタイナー幼児教育協会理事、ライアー響会代表。国内外でシュタイナー教育、ライアーに関する講座、講演、コンサート、執筆などを行っている。

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