シュタイナー教育の視点から

「手本と模倣とお人形」シュタイナー教育の視点から No1

手本と模倣とお人形

「手本と模倣」。シュタイナー幼児教育が大切にしていることの一つです。人間は生まれてから時間をかけて、人間になっていく必要があります。体のいろいろな器官が本来の形に形成され、その機能を獲得し、必要な運動能力を身につけていきます。

人間になっていくという課題を遂行していくために、乳幼児が生まれながらに持っている素晴らしい能力があります。それは無意識に「真似(まね)」をするという能力です。親、家族、幼稚園や保育園の先生や友達、自分の周りにいる人間は、その子どもにとって「人間とは何か?」ということを学び、身につけていくための「お手本」なのです。その「お手本」を子どもたちは無意識に真似して、人間になっていきます。

小さい子どもに接したことのある方は、自分のしていることを子どもが真似することをご存知だと思います。お母さんが使っているその杓文字でごはんを茶碗によそいたい、お父さんの使っているそのボールペンで書きたい、砂場であの子の使っているバケツを使いたい、といった直接的な模倣から始まり、3歳を過ぎるといろいろな「ごっこ遊び」を始めます。お母さんごっこ、幼稚園ごっこ、お寿司屋さんごっこなどです。注目すべきことは、ごっこ遊びのモチーフは、働いている大人、お仕事をしている大人であるということ。大人のしている仕事とは、人間が生きていくために必要な営みです。その仕事をしている大人は、人間とは何をするものかを子どもに伝えてくれているのです。

人形と遊んでいる子どもにも、模倣と手本がよく表れています。お母さん役になって人形の世話をしている子ども。その手つき、語りかける言葉、世話をする雰囲気には、その子どものお母さんや、幼稚園の先生の姿が見事に表れています。幼稚園の自由遊びの時間に人形と遊んでいる〇ちゃんを見ると、〇ちゃんのお母さんは、どのように〇ちゃんに接しているのかが、見事にわかってしまうのです。


プロフィール・吉良創 (きらはじめ)
1962年生まれ、自由学園卒。ヴァルドルフ幼稚園教員養成ゼミナール(ドイツ、ヴィッテン)修了。
滝山しおん保育園園長、南沢シュタイナー子ども園理事、日本シュタイナー幼児教育協会理事、ライアー響会代表。国内外でシュタイナー教育、ライアーに関する講座、講演、コンサート、執筆などを行っている。

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